2014年2月28日金曜日

ワゴンに乗って



東京はストーンズ祭りで賑わっている。僕は親分の許しを得られず、ミックたちに会いに行けない。きっと最後のチャンスだったろうに…。遠くからツアーの成功を祈るしかない。それにしても、ローリング・ストーンズの生命力には感服する。無駄のない動き、演奏の艶、グルーヴ、すべてがリアルタイムである。


僕は今日も標高200メートルの盆地で寒風に吹かれていた。いつもの公園に行き、50円均一の謎めいた自販機で缶コーヒーを購入し、手を温め、ウォークマンでダイナソーjrを聴いた。切なさを捕食する恐竜ジュニアが今日も僕を元気にしてくれた。

行ってみたい場所がある
君が道しるべだよ
君が行ったあの場所へ
ワゴンに乗って出発しよう
ベイビー、そんな感じさ
何とかしなくちゃ
ベイビーどうなのさ
遠くへバックレちまおうよ


ダイナソーjrのアルバムの中では「グリーンマインド」が一番好きだ。20数年前、渋谷陽一氏がラジオ番組ミュージックスクエアの新譜紹介でニルバーナの「ネバーマインド」と合わせて紹介していた。それが最初の出会いだった。『いやあ、ロックですねえ』と渋谷氏は興奮気味に語っていた。今思えば歴史的な神回であった。

ダイナソーjrのボーカル、J・マスシスの歌声は、公園のゴミ箱に捨てられた空き缶の飲み口から洩れるように覇気がない。覇気がないのが疲れた僕らの絶対的共感基準だが、生き抜く前向きな本能を音で見事に表して、僕らの狂暴な捕食能力を目覚めさせていく。つまり、「マジなやる気」をだ。言葉への信頼を失った世代に支持されて当然だ。気怠くも甘味の効いた繊細な楽曲のダイナミズムにより、今やアメリカン・ガレージロックの巨匠として君臨している。かつてロッキング・オンに「J・マスシスに聞け!」みたいな人生相談コーナーがあった。うぶな僕にはよく分からなかったが、今なら相談したいことがたくさんある。

倒れるかと思いきや一撃必殺を繰り出す酔拳のような処世術は、倒れそうな僕を今日まで生かしてくれた。諦めと忍耐と希望が絶妙にブレンドされた音楽は、僕ら脱藩浪士の最強の仕込み刀である。


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