2013年11月21日木曜日

太陽に突っ込め


面接で、身長やら体重やら健康状態やら意味不明なことだけ質問されて帰されて不採用にされたことがある。血液型を妙に気にする馬鹿もいた。それら以外にも、落とされる理由が良くわからない面接を数多く経験した。そんなときにふと思うのは、こいつらはアンチなのではということである。俺の主義主張を成す根本思想は履歴書を見れば一発で分かる。

主義主張が全く異なる敵をわざわざ自分の会社に入れるわけがない。これは考えようによっては都合がいい。入ってから敵の巣窟だったと後悔しなくて済むからだ。

子供の頃から見えない敵の存在には敏感だった。敵はどこにいるか分からない。ベトナムのジャングルのように、スナイパーの目を掻い潜りながら池を埋め立てた小学校や丘の上に立つ要塞のような中学校への行き帰りを繰り返していた。やがて自然と目に見えないものを見抜く能力が養われていった。その卓越した能力を活かして大人と呼べる歳になってからは、「最後に飛び乗った、訳もないぜ」的な勝ちを収めた。怖いものがなくなった俺は、鍛え抜かれた想像力を持て余していた。そして暇さえあれば、架空の猫を追い回していた。

猫はどこからともなく飛んできたり、湧き上がったりする。その猫は色んな所へ侵入していく。図書館や、食堂や、授業中の教室と様々だ。会議中の会議室に紛れ込んだ時はこの上なくシュールだった。そんな俺に誰もついて来れないのはいうまでもない。猫はやがて、あいつやあの子の心のなかにまで侵入し始め、俺は音を立てずに猫の後から一緒に入っていく。あいつの涙が本物で、あの子の涙が全部嘘だったことが、俺を振り向かせることはない。ただ目の前の猫に夢中になっていた。すべてのものに「穴」があり、そこに入っていけるのは、「猫」とその猫を追う「俺様」だけだった。暗い夜には夜に穴を開けて、悲しい夜には悲しみに穴を開けた。後にも先にも誰もいない、自分だけの世界で、決して捕まえることのない猫を追い回しては「穴」を出たり入ったりを繰り返していた。敵など何処にもいない。ただ、気持ちいい世界がそこにあるのだ。

夜の帳が下りて、トラツグミの声に目を覚ますと、目の前に猫が斜めに舞い降りる。猫は、音を立てずに、歩美が服を脱いでいるオレンジ色の脱衣所に入っていく。俺もそっと中へ入っていった。

つづく・・・

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